「私はなんのために生まれてきたのか？」この根源的な問いは、古今東西を問わず人類が抱き続けてきた永遠のテーマです。現代社会では、物質的豊かさの一方で精神的な空虚感に悩む人が増えており、この実存的な疑問はより切実なものとなっています。今回は、極限状況で人間の尊厳を見つめたフランクル、東洋思想の神髄を究めた空海、そして自由と責任を説いたサルトルという、異なる時代と文化圏から選ばれた3人の偉大な思想家が、あなたの心の奥深くにある問いに答えます。
ヴィクトール・フランクルの回答：「意味は与えられるものではなく見出すもの」
ヴィクトール・フランクル「あなたがなぜ生まれてきたのか、その答えは既にあなたの中にあります。」
私はアウシュビッツという人類史上最も過酷な状況を体験しました。そこで学んだのは、人間から奪えないものが一つだけあるということです。それは「態度を選ぶ自由」─どんな状況においても、自分がその状況にどう向き合うかを決める自由です。
収容所で多くの人々が絶望に押しつぶされる中、生き抜いた人々には共通点がありました。それは、自分の人生に何らかの意味を見出していたことです。愛する家族への想い、未完成の仕事への責任感、苦難を通じて得られる体験への価値発見─これらが彼らを支えていました。
あなたが「なぜ生まれてきたのか」と問うとき、実は問いの立て方が逆なのです。正しくは「人生があなたに何を期待しているのか」と問うべきです。人生は毎日、あなたに新しい課題と可能性を提示しています。病気の家族を支えること、創造的な仕事に取り組むこと、誰かの悩みに耳を傾けること─これらすべてが、あなただけが果たせる固有の使命なのです。
私のロゴセラピーでは、意味は3つの源泉から生まれると教えています。創造価値（何かを成し遂げる）、体験価値（何かを体験する）、そして態度価値（避けられない苦痛に対してどう向き合うか）です。どんな状況にあっても、これらのいずれかを通じて意味を見出すことができます。
「人生の意味を問うてはいけません。問われているのはあなた自身なのです。人生があなたに期待していることに、責任を持って答えることが、あなたの存在意義なのです。」
空海の回答：「即身成仏─あなたは既に仏である」
空海「なむ、なぜ生まれてきたのかという問いそのものが、既に仏性の現れなのである。」
私が中国で学んだ真言密教の教えによれば、すべての存在は大日如来の現れであり、あなたも例外ではない。あなたが「生きる意味」を求めるその心こそが、本来持っている仏性─悟りの本質が目覚めようとしている証拠なのだ。
凡夫は自分を小さな存在だと思い込んでいるが、これは根本的な誤解である。あなたという存在は、宇宙の根本原理である大日如来と本質的に同一なのだ。なぜなら「色即是空、空即是色」─この物質世界のすべては空の現れであり、空とはすなわち大日如来の智慧だからである。
私が開発した真言の修行法は、この真理を体現するためのものだ。「南無大師遍照金剛」という真言を唱えるとき、あなたは自分が大日如来と一体であることを確認している。手に結ぶ印、口に唱える真言、心に思い浮かべる本尊─この身口意の三密が一致したとき、あなたは「即身成仏」を実現するのだ。
高野山で私が体験したのは、個人の小さな悩みを超越した宇宙的な視点だった。あなたの人生の苦しみも喜びも、すべては大日如来の慈悲の現れなのだ。生まれてきた目的は、この真理に目覚め、すべての衆生を救済することにある。
あなたが今この瞬間に呼吸していること、考えていること、悩んでいることのすべてが、実は大日如来の活動そのものなのだ。だからこそ、日常の一つ一つの行為を丁寧に、慈悲の心を持って行うことが修行となる。
「即身成仏─あなたは既に完全な存在です。ただそれに気づいていないだけなのです。真言の修行を通じて、本来の自分に目覚めなさい。」
サルトルの回答：「実存は本質に先立つ─あなたが意味を創造する」
サルトル「なぜ生まれてきたのか？その答えは簡単だ。偶然である。しかし、その偶然を必然に変えるのがあなたの使命だ。」
私の実存主義哲学の核心は「実存は本質に先立つ」という命題にある。つまり、あなたは何らかの目的や本質を持って生まれてきたのではない。まず存在し、その後で自分自身を創造していくのだ。これは恐ろしくもあり、同時に最高に自由なことでもある。
神が存在しない世界では、人間には予め定められた本質や目的はない。あなたは「無」から投げ出された存在として、自分自身の価値と意味を創造しなければならない。これが「人間は自由の刑に処せられている」という私の言葉の意味だ。
私とボーヴォワールの関係を例に取ろう。我々は伝統的な結婚制度に囚われることなく、自由な契約に基づいた関係を築いた。これは既存の価値観を拒否し、自分たちの価値を創造した結果だ。同様に、あなたも社会や宗教が押し付ける「人生の意味」を受け入れる必要はない。
重要なのは「状況への投企」である。あなたは今いる状況に「投げ込まれた」存在だが、その状況をどう解釈し、どう行動するかは完全にあなたの選択だ。貧困、病気、失恋、挫折─これらの状況そのものには意味はない。あなたがそれらにどう向き合い、どんな行動を選択するかによって、意味が生まれるのだ。
私が反ナチ・レジスタンスに参加したのも、既存の秩序に対して「ノン！」と言う選択をしたからだ。あなたも毎日、小さな選択を通じて自分自身を定義している。その積み重ねが、あなたという存在の意味なのだ。
「あなたは自由だ。絶対的に自由だ。そして、その自由に対して完全に責任を負わなければならない。これがあなたの存在の意味なのだ。」
まとめ
三人の偉大な思想家が示したように、「なぜ生まれてきたのか」という問いに対する答えは一つではありません。フランクルの「人生からの問いかけに応答する」視点、空海の「本来の仏性に目覚める」教え、サルトルの「自由な選択による自己創造」─これらすべてが真理の一面を照らしています。大切なのは、外部から与えられた答えではなく、あなた自身が日々の生活の中で意味を発見し、創造していくことです。あなたの存在そのものが、すでに十分に価値あるものなのです。